2014/11/05

中国で世界を制する自動車メーカーを探せ

〜世界販売車の4台に1台を保有する国〜

●今から刻を遡ること10年。2004年時における中国自動車市場は、まだ500万台規模(当時の世界生産6,395万台)に過ぎなかった。
しかし中国政府は、その5年後にあたる2009年度、1,600㏄以下の乗用車購入税を半減させ(10%から5%へ)、また中国内陸部での農用車を乗貨両用車両へ置き換える等の乗用車取得奨励策を実施。
これを期に、リーマンショックで低迷する米国市場を出し抜いて(2010年に1,851万台)、以降、世界で売れた新車のうち4台に1台を保有する国となった。

●以来、中国政府は、外資の力を利用してきた過去の産業育成手法からの離脱を模索し始め、生産から販売、アフター市場に至る全域で、自前主義へと軸足を移そうとしている。
こうした政府方針に応え、地場資本も精力的な活動を見せ、冷蔵庫の製造会社として生まれた後(1986年設立)、二輪車製造を経て1997年に四輪自動車事業に参入した「吉利汽車」のように、遂には外資のVolvoを飲み込む例(買収年度2010年)も現れている。

〜中国自動車市場の主導権を握る戦い〜

●一方で、独国資本のVWことフォルクス・ワーゲンは、市場開放の初期段階から中国参入を果たし(1984年、上海汽車と提携し市場参入)、2008年には、当時のVWが持っていた量産用車台(PQ34型)をベースに、上海VWの「朗逸」ことLavida、一汽VWの「宝来」ことBora(現在は新型車台PQ35型に移行)など、車両1台あたり10万元(2014年11月5日現在で187万円)以下のプライスラインで売れ筋のクルマを揃え100万台超の販売総数をマーク。中国国内シェア・ナンバーワンの座を守り続けている。

●対する中国国内の自動車メーカー各社は、地方政府が保有する中小メーカー等も含め、未だ100社以上がひしめいていて、その実力ならびに実績共に、未だ玉石混淆の状態にある。
また多くの消費層が年々拡大する所得増加に伴い、より高品質に、より高性能に、より高価格なクルマを求めていることから、電池メーカーとして生まれた比亜迪(BYD・2003年設立)の「F3」が2010年に一旦、乗用車販売台数第1位(26万台)になったものの、以降、販売上位へのランクインは果たせてはいず、純粋な中国資本が国内マーケットの主導権を奪うまでには至っていない。

〜日本メーカー各社が低迷するなか、マツダに勝機アリ〜

●ただ中国市場に外資が参入する際は、当地企業との50%以内の出資比率を背景とした合弁でしか中国進出が果たせず、また不透明な政府の認可を取得しなければならないことから、技術的優位に立つ外資企業であっても、中国自動車市場での覇権拡大は容易なことではない。

●そうしたなかで、PSA出資を果たした東風汽車(2014年4月に14%の出資完了)を筆頭に、第一汽車や一汽轎車などの現地企業と組みするなどして、外資の一角を占めてきた日系メーカー各社も、努力むなしく永らく苦戦が続いてきた。しかしこの2014年に入ってから、気丈にもマツダのみが販売台数を伸ばし続けてきている。

〜ふたつの製造・ディーラー網から中国ユーザーへ〜

●具体的には直近(2014年11月4日発表)のマツダこと「馬自達」の2014年10月の中国内における自動車販売台数は、トヨタ、日産、ホンダがおしなべて販売目標値を達成できない可能性が見え始めているなか、2013年同期比較10.5%増の1万9788台に達している。

●現在マツダは、中国国内で第一汽車との合弁である「一汽マツダ」。長安汽車との合弁の「長安マツダ」というふたつの製造・ディーラー網を持っているが、この10月の自動車販売台数の内訳は、一汽マツダの販売台数が、前年同期比19%減の8859台。長安マツダが、前年同期比56.8%の大幅増加を示し1万929台となった。

〜3世代のアテンザ併売でも売れる特殊性〜

●他の日本車メーカー各社が中国で低迷している原因は「新車導入ペースが遅いこと」「販売価格の設定に違和感がある」と当地では云われている。つまるところ中国消費市場の変化していくスピードに追いつけていないのである。
一方で、中国当地のマツダ・アテンザこと「馬」は、初代「馬6」、2代目「馬6ルイイー」、そして最新の3代目「馬6アテンザ」と、3世代の新車が微妙な価格差で今も併売されている。

●現在、中国マツダは「一汽マツダ」と「長安マツダ」という2つの販売チャンネル下で、総計435の販売店があり、うち235店舗が一汽マツダ、残り200店舗が長安マツダとなっている。
個別チャンネル網での取扱車種は、一汽マツダが、馬6ことアテンザ(新旧)、馬8ことMPV、馬5ことプレマシーとCX-9、MX-5こと輸入車種のロードスター(輸入完成車に対する関税課税率は25%、MX-5の場合、ここに増値税や流通コストが加わる)。
長安マツダでは馬2ことデミオ、馬3ことアクセラ(新旧)とCX-5となっている。
なかでも3世代を併売する馬6(アテンザ)と云う車名は、もはや自動車メーカーとしての馬自達(マツダ)ブランドよりも知名度が高い程の人気で、昨年2013年度も、馬6だけで9万4000台を売り上げた。

〜クルマ造りのブランド価値はどこにある〜

●当のマツダではクルマ造りに対して、「マツダのクルマには競合車がなく、自社独自の価値を世界に提供する(小飼雅道社長)」と語っており、10%の熱心なコアファンを獲得することを通じて、世界シェア2%を取ることが目標であると云う。
その志は明確で「値引きしなければならないような退屈なクルマはつくらない、今後も生き残っていくために、高くとも欲しいと思われる車を作り、結果、世界で走る車のなかで2%のシェアを死守していく(小飼雅道社長)」戦略だ。

●もはや自動車製造の世界においても、家電製品やIT製品などと同じく、車両の構成部品は、高度な「すりあわせ技術」を要しないモジュール単位の組み合わせが増えており、今や自動車メーカーにとっても「商品の構成力」が最も重要なブランド価値の生命線となってきた。

●このため、もはや商品を設計・構成していく際の実現力が低ければ、独自のブランド価値が作り出せない時代となった。
そもそも中国市場は、世界でも特に突出した経済規模であるゆえに、かつての米国市場と同じく、地場の自動車メーカー各社は国内での地位確保に腐心する傾向が強い。従って海外進出を目指す指向性が低いのだ。
このため今後、中国国内市場が成熟に向かうにつれ、新興国らしい特殊性はますます薄れるようになり、米国市場同様、世界各国の自動車メーカーがひしめき競合する場となっていくことから、魅力的な商品の選択肢は、幾らでも登場してくるだろう。

〜世界シェア2%というシンプルかつ厳しい命題〜

●つまり10%の熱心なコアファンを獲得することを通じて、世界シェア2%を取る…これが中国においても自動車ファンに伝わらないとマツダには明日がない。そうした企業の強い意志を独自のクルマ作りに込め、ブランドというカタチにして熱狂的なマツダファンへ届けなければならない。
そこにはボディ設計に対する想いがあり、骨格構造に対するこだわりがあり、結果として形作られるスタイルにもあり、ボディカラーにも、手に触れる質感にも、さらにはプロモーション手法からセールスに至るまでのすべてに、一貫性が求められる。

●突き詰めるとクルマというものは単なる移動の道具ではあるのだが、それでいながらも、乗る人の感性に訴えるものだけに、作り手のメッセージが伝わる集合知の結実したものでなければならない。
マツダの場合、世界で2%を目指すと云うその想いがブランドとなって、ようやくユーザーに見えるようになってきたのだろう。

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2010/01/07

新しいコンパクトカーの姿を探せ

〜デリーオートエキスポ〜
●2010年1月1日付で、VW業務窓口を浜松本社ならびにドイツに設置したスズキは、単一国に於ける自動車生産数100万台を狙いインド投資を繰り広げてきた。
結果、既にインド国内の販売実績は72万台(輸出を含めた販売台数では前年比3.6%増の79万2,167台)。乗用車市場では5割のシェアを誇るまでになっている。
そのインドで昨日から自動車ショーの祭典「デリーオートエキスポ」が開催されている。
実は、同国の空の玄関口であるインディラ・ガンジー国際空港から、デリーオートエキスポが行われているニューデリー市に向かう幹線道途中には、インド国内シェアトップを誇るマルチ・スズキに相応しく、かつ真新しい本社ビルが見える。

〜トップメーカーとしてのスズキ〜
●世界の自動車メーカーの首脳たちは、その佇まいをデリーオートエキスポに向かう車窓から眺めながら、「1981年にマルチ・ウドヨグとして発足、1983年に同国ハリヤナ州グルガオン工場で自動車生産を開始。以来着実な成長でインド国内で強固な信頼を獲得するに至ったスズキの躍進」を思い知り、市場浸透率の深さにさらなる想いを馳せるに違いない。
さて、そんな本社ビル建設だけなく、スズキにとって2009年は、インドを代表し、かつ牽引する押しも押されぬトップメーカーとしての存在感を世界に与えた年であった。

〜もはや中小企業とは言わせない〜
●昨夏は同国の首都、ニューデリー北西に位置する「ハリヤナ州ロータク」の産業モデル都市に、280万平方メートルに及ぶ広大な区画を取得。
2015年完成を照準に、衝突実験設備や風洞実験設備の他、最新のテストコースを備えた自社R&Dセンターを設置する計画を発表した。
スズキはこのインドの地を、自動車開発のハブに見立てて世界展開を視野に入れた小型車造りの基地開発を目指し始めたのである。

〜日本は海外からクルマを買う時代に〜
●日産が次期マーチを、アジア発信の国際商品とする計画を打ち出し、その完成車を日本国内に輸出する構えを見せているように、スズキは、インドに於けるマルチ・スズキが持つロータクR&Dセンターをハブに、既に同社の自動車生産拠点であるマネサール、グルガオンを繋ぎ、デリーオートエキスポ開催当日に自動車販売打数トップに躍り出た中国と、伏兵、韓国を迎え撃つ。

〜小型車だけじゃないスズキのチカラ〜
●スズキの日本ならびに米国に向けた動きでは、先に日米同時発売で話題を提供したキザシが順調に滑り出している。
同車の特徴は、足回りの特性など従来のスズキ車にない欧州車テイストにある。正直、飾り気の無い装飾等、内外装共にかなり日本車離れしたインターフェイスで、独車や北欧車を志向する向きには歓迎される手堅い造りが売り。また同車へは近々、GMと共同開発したハイブリッドユニットが搭載される見込みでもある。

〜強固なインド国内のサービス拠点〜
●加えてスズキで興味をそそるのは、戦略上のイコールパートナーとなったVWとの関係だ。
そもそもVWは、インド国内に満足な自動車インフラのサービスネットワークを持たないから、自動車開発のパートナーとしてのスズキの存在にも増して、おそらく延べ1000拠点に迫るマルチ・スズキのサービス網に魅力を感じているのであろう。
しかし当のスズキは、インドオートエキスポで、同国の国家プロジェクトを背景に開発された電気自動車「バーサ」を筆頭に、ハイブリッド車「SX4ハイブリッド」や、6人乗り多目的車「コンセプトR3」を発表。
来る2015年には販売台数で400万規模に倍増すると見られるインド市場に於いては、VWと協調していくというよりも、世界の自動車メーカーを向こうに回して、過酷な生存競争に挑む構えが見える。

〜スズキを追う立場のトヨタ〜
●一方、世界規模でトップシェアを誇るトヨタは、インドの国内シェアは僅か2.3パーセントしかない。
トヨタは、デリーオートエキスポで、アジア圏での部品調達率を半分を大きく超えるまでに引き上げた1500ccセダンと、1200ccハッチバック車「エティオス」と共に、2010年の発売を決めた「プリウス」を繰り出し、インド国内の自動車販売実績倍増を目指している。
またホンダは、フィットのプラットフォームを設計思想の基礎に据え、製造コストの大幅削減を達成した1000ccクラスのコンパクトカーをぶつけていく構えだ。
対するスズキは、ドイツ約2割増、フランス約5割増と、一部のマーケットでは依然、好調さを見せる欧州対策車としてのAスターや、リッツ(スプラッシュ)を相次いでリリース。日本国内でのライバルメーカー各社は、ここインド市場でも手強いライバルとして、疾走するスズキのシェア5割の切り崩しを狙う。

〜見えてきた自由貿易圏の夢〜
●ちなみに今後、アジア域内は、インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)の他、インドと韓国の経済連携協定(EPA)も発効、日本もASEANとEPAを発効。
中国と韓国は、ASEANとの間で大半の品目の関税を相互撤廃する流れから、このASEANを軸にした約32億人という巨大市場が「自由貿易圏」という大きな夢に向かっていよいよ動き始める。
目下、現時点で世界シェアトップのトヨタは、ダイハツ工業・日野自動車を除く2010年の世界生産計画において、2009年実績見込み比109万台増の749万台(北米2009比30万台増の156万台。欧州同5万台増の57万台。中国同18万台増の79万台、中国を除くアジアは同13万台増の95万台)を目指しているが、中期・長期的視野から見ると、ASEANを軸とした域内は、貿易・投資競争に大きな弾みがつく。従って中国自動車メーカーの躍進は確実である。日本の自動車メーカーのアジア戦略にも大きな影響を与えていくだろう。

〜コンパクトカーメーカーが消えていく〜
●そうしたなか日本国内ではスポーツ車メーカーでありながらも、コンパクトカーメーカーの一社でもあったスバルの動きを眺めると一抹の寂しさがつきまとう。
それは資本関係のあるトヨタとの強固な連携体制の結果、とは言え、折角、三菱自動車と並んで2009年に量産EVのプラグインステラを世に問い、この2010年には200台のEV販売を計画しているにもかかわらず、ステラ自体の生産が2011年6月まで。さらにすべての軽自動車の生産が2012年3月を以て完全に潰えてしまうからだ。

〜日本の小さなクルマが世界を牽引する〜
●日本の軽自動車は、鎖国的とも言える限定市場のなかでの極めてドメスティックなセグメントでしかないのだが、開発思想やコスト削減手法、またクルマ造りの考え方では、今後、「現行の小型車よりは若干下を目指す」とする世界戦略車の礎になりえるものと思う。
ただもはや日本国内市場に於いても、660ccという現在の軽自動車の排気量区分は、決して最適とは言えないから、この際、EV搭載も含めた出力別による税法優遇措置を導入するなど、まったく新しい視点を携えて、世界市場でも勝負することのできる新しいコンパクトカーの姿を追求して欲しいものと、業界の書き手としてだけではなく、いち自動車ファンのひとりとしても、一重に願うばかりだ。

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2008/11/15

自動車業界の閉塞感の源泉

〜米国での自動車生産体制の苦悩〜
●米国では、金融機関が抱える不良債権を「公的資金で買い取る」金融救済新法実施が加速している。
新法制定に伴う買い取り総額は、当面2年間で7000億ドルと伝えられているが、実際の総額では米国の1年分の軍事費に該当する1兆ドルを大きく超えるだろう。
ちなみに目下、米国が抱える財政赤字総高は約10兆ドルだが、公的資金投入など景気浮揚策にともなう投資でさらに赤字が膨らめば、国際通貨としての威信はさらに低下し、安定した資金を求める新興国や資源国が米国債の購入を差し控えることは確実で、いよいよドル急落のシナリオが現実味を帯び始めている。

●そんな米国では、当初、経済危機に伴い自動車などの「耐久消費財の購入意欲が削がれる」と考えた経済アナリストが多かった。
しかし実際にはクリスマス商戦に突入したのに関わらず、むしろ日常の衣料品など生活消費分野に対してさえ消費者の購買力が低迷。
同影響下でホンダは、北米におけるSUV等の生産計画を当初計画より9万台下方修正。トヨタも米ミシシッピ州で建設中の完成車工場の稼働を2011年以降に延期。日産自動車へボディパーツを供給しているプレス工業も、米国第2工場を年内に閉鎖する。等、日本の自動車メーカーの戦略は大きく軌道修正を強いられている。
ただし日本メーカー各社は自動車の現地生産体制を確立して久しく、米国内で一定の信頼と市民権を勝ち得ている。ゆえに将来の日本叩きを防ぐ意味合いからも、現実には安易に現地従業員の切り捨てには踏み切れそうにない。

〜大企業のエゴだけでは解決しない事柄〜
●ちなみにこのような生産台数減に伴う危機は、米国のみならず日本メーカー各社のお膝元でも起こっている。
「トヨタ九州」がある福岡県宮若市では、同社から得られる予定だった来年度の法人市民税が前年見込みの6億7千万円から300万円に急落しているし、トヨタ車体は「派遣労働者を期間従業員へ切り替え継続雇用する」という違法騒ぎが発生。全国各地でトヨタが推し進める期間従業員の契約継続の大量打ち切りは、マスコミでは全く報じられていないが、日本国民の労働環境を守るべき役割を担う厚生労働省ならびに対象地方の労働監督行政下において、大変な混乱を与えている。

●米国の場合は、企業経営者の自由を守るために労働者を守ることを放棄した法律体系を持ち、未だに世界の先進国の中で唯一の異端児を演じ続けている。
しかし日本の労働行政は、欧州を範にした本来の国際水準を遵守するスタンスであるから、労働インフラへの打撃を与える行為は、現実的にはトヨタ1社の考えだけではそうそう簡単には実行できない。
つまりこれまで米国が唱えてきた数多くのグローバルスタンダードは、いずれも米国のひとりよがりの一国主義の産物に過ぎず、これからは「米国追従」という眼鏡を掛けたままの単眼的視野では、日本が世界においてどのような立ち位置にあるかを判断すること、さらに国際社会に対して日本がどう対処していけば良いのか、自動車業界にとって何か正しく、何を成すべきかが一向に掴めずに終わるだろう。

〜自動車ファンは単眼的視野を捨てるべき〜
●こうしたことは、実のところあらゆる領域においても同様で、自動車技術動向も複眼的・多角的に時流を捉えていくことが重要だ。
例えば昨今の自動車エネルギーの環境下では、有機ハイドライドによる独自の水素貯蔵技術を持つ札幌のフレイン・エナジー社が、英プロセス・イノベーション・センターと水素インフラプロジェクトを共同推進する契約を締結。欧州における新エネルギーの供給体制に対して多大な貢献を行うべく開発準備を精力的に進めている。
一方、セグウェイ発明者のケーメン氏は、2000年に製造中止された電気自動車「Ford Think」をベースにリチウム電池とスターリングエンジンを搭載したHVを発表。これをノルウェーの会社が製品化に名乗りを上げている。さらに米SEMAショーでは、水を電気分解することで取り出した水素をガソリンと混燃させることで、燃費を15%〜33%向上させるツインターボエンジン搭載の450馬力スポーツカー「Scorpion」のお披露目が行われた
いずれも自動車メーカーが表立って主導する動きではないが、水素スタンドの設置体制すら見えず、未だ実用化にはほど遠い未来の燃料電池車に想いを馳せるより、これらのほうが、より具体的な明日を見据えたテクノロジーなのかも知れない。

●人に対する認識も同様で、単眼では過去のステレオタイプの認識を決して超えられない。
例えば、ここ数日、トヨタの奥田碩相談役の発言に対してマスコミの批判が集中している。しかしだからといってトヨタを刷新した彼の功績が色褪せる訳ではない。
また日産自動車を劇的なV字回復させたとマスコミに絶賛されたカルロス・ゴーン氏も、つまるところ技術的には米国流の減損会計を導入。日産自動車の財務管理上で徹底しただけであり、日産を知り尽くした前任者の塙義一氏が行えなかった日産の体質改善を実行に移した功績はたたえられるべきではあるが、企業立て直しのテクニックとして実際には特筆すべきものがあった訳ではない。
かつて米国ビジネスウイーク誌で優れた経営者のひとりとして選ばれた出井伸之氏は、なんと最近、同じ媒体で今度は世界のワースト経営者のひとりに選ばれている。
奥田氏もゴーン氏も出井氏も、人としてすべてにおいて優れた資質を持っている訳ではなく、極端に言ってしまえば経営者の立場で「その時やるべきことをやったまで」に過ぎない。

〜情報を選ぶこと・多角的に捉えること〜
●昨週はカー・オブ・ザ・イヤーで現時点で発売されていない意外なクルマが栄冠を獲得した。
こうしたアーワードついて筆者は数年前に日本国内の自動車アワードについて上稿したが、もはやマスコミからの情報が唯一無二の真実として語られた時代はとうに過ぎ去り、格式が売り物だった年に一度のアワードですら個々の消費者にとっては、今や断片的な情報のひとつに過ぎなくなった。
このような一方的なひとつの情報だけを真正面から受け止めているだけでは自動車業界の全体像が一向に見えていない。
マスコミの発信する情報に追従していけば安心という姿勢は、もはや不健全で格好悪いことなのだ。情報洪水のなかで屈せず自分の信念に従う方が、マスコミ報道に追従するよりも格好良いと、多くの自動車ファンが思い始めた。最近の自動車業界の閉塞感の源泉は、こうしたマスコミ主導環境の破綻にある。

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2008/10/22

米国覇権の崩壊で自動車メーカーが成すべきこと

〜格付けだけで企業価値を判断できない〜
●自動車業界を含む社会経済は、企業の実態活動と別の「金融システムから与えられた信用」によって支えられてきた。
特に1990年代以降は、ムーディーズS&Pなどの格付け会社が、各企業の発行債券が約束どおり履行されるかについての確信性に基づき、AAAからDまでの段階的データに置き換えた格付けが、企業優劣を判断するためのよりどころとなってきたのである。

〜金融工学は米国が編み出した国家戦略〜
●実際には、個々企業の実態活動とは切り離された単なる予想でしかない「格付け」だが、それが高ければ高いほど対象企業は低利回りで債券を発行でき、IT化によってグローバル化した国際金融市場から低コストで資金を調達できる。
しかしかつては、こうした「格付けシステム」は近代資本主義社会におけるひとつの金融ツールでしかなかった。
この金融ツールに着目して独自の金融工学でデコレート。あらゆる債権債務を証券化して流通させるレバレッジ型の金融ビジネスを造りだしたのは他でもない米国だ。
つまるところこの画策は、モノ造りで日本に敗れ去った1980年代の米国が、国際金融市場での覇権を目指すために編み出したひとりよがりの戦略に過ぎない。

〜安易な利益拡張に飛びついた金融機関〜
●そもそもこうしたレバレッジ型の金融ビジネスとは異なり、市民から広く集めた預金を企業に融資し利益を出す従来型の金融ビジネスでは、どう努力したところで総利益(ROE)で15パーセントあたりが限界だったし、銀行は企業等へ貸し出した融資が返済されるまで一定の投資リスクを負わねばならなかった。
しかし証券をレバレッジ化する金融工学を使えば、総利益で100パーセントを超えることすら決して珍しいことではなく、融資債権を証券化してただちに売却できるため、投資リスクの要因も大幅に減少する。

〜国際的な金融バブルが瓦解していく〜
●米国が金融工学で時代を牽引し、国際社会が金融工学という金融錬金術にノーベル賞を与えてしまって以降、このアングロサクソン型レバレッジ金融は、天井知らずに拡大の一途を辿り、米国内で10兆ドル程度、世界規模でさえ30兆ドル程度と言われる金融市場の規模を、10兆億ドル以上に膨れあがらせ、国際環境下で擬似的な金融バブルを造りだした。

〜借金で利益を造り出す金融錬金術〜
●しかし遂に先の米国金融危機により、こうしたアングロサクソン型の金融ビジネスは破綻した。
この発端は既にご承知の通り、米国金利上昇で住宅ローンを返済できない国民が増えたことで住宅ローン債券を買い取らない金融機関が急増したからだが、これを受けて米国だけでなく、世界の金融業界も損失を被った際の対応をしておらず、格付けの信頼性は一瞬にして吹き飛んでしまったのである。

〜失敗のツケを負わない銀行、影響は市民に〜
●このような企業の実態活動とは遠く掛け離れたところで行われる金融錬金術は、企業運営上で有る意味不必要なマネーゲームであり、米国流の倫理観なき環境下で発生した同危機は、人災そのものである。
ただ、このレバレッジ経済の破綻と無縁な市民たちが対岸の火事としてこれを漫然と眺めているだけではとても危険だ。
もちろん金融危機が終わって再びレバレッジ型金融でケタ外れに儲かることはない。けれども投資家たちによるマネーゲーム失敗のツケを銀行などの金融市場が負うことはまずない。この影響は失業者の増大や消費市場の不振に直結していくからだ。

〜米ドルの実質価値はまだまだ下がる〜
●米国は、金融危機によって金融機関が抱えた不良債権を政府が公的資金で買い取るための新法制定を進めているものの、米金融界の不良債権はさらに拡大するのは必至だ。その総額は最終局面においては2兆ドルに近づく可能性すらある。
本来、米国では巨額と言われる年間の軍事支出ですら5000億ドル程度で、米国内の財政赤字の総残高は10兆ドルである。
当面、財政赤字は米国債の発行で穴埋めされるだろうが、そもそもこの米国債の大半は日本を含む海外政府や投資家が買っており、彼らが米国債を買わなくなると米ドルの長期金利が高騰。米国債の債務不履行を引き金にドルの価値がさらに急落するシナリオも、いよいよリアリティを帯び始めた。

〜為替の影響を受ける日本の自動車系企業〜
●今でさえ同危機は、米欧日の中央銀行が無制限のドル供給を行うことで何とか回っているに過ぎない。今後は米政府の巨額の救済策も効かず、またG7の国際協調の救済策も効かない。金融システムの深刻な危機は今も深まっているのである。かつて1929年の金融恐慌において、日本は世界大戦を行い敗戦へと向かう破綻の道を歩んだが、この経済破綻が日本の自動車メーカーの実質活動にどこまで深刻な影響を与えるかは、未だ予断を許さない状況にある。

〜米欧における国際的な覇権争いの勃発〜
●この流れを受けて世界経済に対して今後も裏から影響力を行使し続けたいと考えている英ブラウン政権は、金融危機後の国際的金融の主導体制について第2のブレトンウッズ会議を早急に開こうと呼びかけている。
同会議は、米英独仏伊日加のG7にBRICとその他の主要国(南アフリカ、サウジアラビア、メキシコなど)が参加をにらみ、かつて1944年の「ブレトンウッズ会議」によって構築されたIMFと世界銀行による国際金融機関の体制見直し進めるものである。

〜米国債売却に乗り遅れる日本政府〜
●同会議は今の金融危機の解決策の抽出機会としては必要だ。しかし結局は、前ブレトンウッズ会議と同様に米経済覇権崩壊後の世界体制を巡る国家間の覇権争いに過ぎない。
現実には、中国政府はすでに自国の銀行に対し銀行間市場での米銀行への貸し出しを禁じるなど、国際銀行間融資は綱渡り状態にあるし、そうした中国を筆頭に中東・南米との連携を取り始めているロシアの動きなど、世界各国は瓦解する米国債をいかに上手く売り抜けるかに必至だ。しかし円換算で70兆円(6000億ドル)を抱える日本は、対米従属体制のなかで巨額の損失を被るかも知れない。

〜米ドル至上主義、ドル経済圏の崩落〜
●一方で富裕層への減税政策を熱心に行ったブッシュ政権下の米国は、国内の貧富の格差がさらに拡大する愚行を繰り返し、遅かれ早かれ国際金融システム上での超大国の地位を失うだろう。世界は確実に多極化する。現時点では世界の基軸通貨は確実にドルなのだが、今後は複数通貨による組み合わせになる可能性が出てきている。具縦気にはアジアと欧州に、いくつかの新たな資本のハブエリアが登場する可能性は高い。

〜今一度考えたい、企業は誰のためにあるのか〜
●日本の自動車メーカー各社にとって、同影響を受けて下落し続けた為替の影響は深刻で、例えばトヨタ自動車ではドル換算で1円の円高は、実業における350億円もの損失に相当する。各社共「爪に火をともす」「絞った雑巾をさらに絞る」といった涙ぐましいコストダウンの継続努力など、たった1円のドル下落が吹き飛ばしてしまう。
今日レバレッジ金融が台頭するなかで「企業は株主のためにある」と説いた価値観が日本のベンチャー資本家のなかで一人歩きしたが、それは国際的には米国のみが持つグローバルスタンダードに過ぎず、EU圏各国の大半においては「企業は社会のためにある」と説かれている。
本来、企業が実業の上で努力した結果が、あくまでもコイン裏側、影の部分でしかないマネーゲームに影響されるという実実が果たして正しいことなのかを考えてみるべき時に来ている。

〜新たなマネーゲームには迎合しない志を〜
●かつて21世紀をまたがって失われた10年を経験した日本は、永らく米国型グローバルスタンダードに振り回されてきたが、本来日本には日本独自のビジネススタイルがある。
日本の時の首相は先に「排出権取引を活性化したい」と経団連に要望。したようだが、これによって日本が排出権という国際的なマネーゲームに巻き込まれないことを祈りたい。いずれにしても昨日より今日、今日より明日へ向けて、国際的なビジネスの価値観は大きく変革しているのだから。

〜拡大なき企業存続という道もある〜
●1980年代に日本のモノ造りは世界を席巻したが、それを踏まえて巨額の資本準備金を抱えるに至ったトヨタは、米国式に中国から中東、南米、アフリカと企業覇権を拡大させて仮にすべてを駆逐した後、どういうビジネスを展開するのか。我々日本人のビジネススタイルには、覇権主義とは異なる独自の企業論理もあるはずだ。
日本国内の老舗ブランドを筆頭に我々現代日本人が学ぶべきお手本は、歴史を紐解くことなく現代社会にも数多く存在する。米国の覇権主義が陰りを見せている今、アングロサクソン型のような拡大や覇権を目指さないビジネスモデルを持つ日本。そんな我が国は世界を救うに値する資質を備えていると筆者は固く信じている。

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2007/11/04

スポーツカーが売れなくなった訳

〜金太郎飴みたいなクルマが増殖中〜
●千葉県・幕張メッセで行われている「東京モーターショー」がいよいよ終盤を迎えるなか、日本自動車販売協会連合会が、昨月10月度の新車販売・登録車台数を発表した。

●それをここで紐解いてみると、10月実績では前年同月比で約2パーセント増の26万9221台という記録が見て取れる。この数字は単月で見ると、まずまずの様にも思えるのだが、現実には今年も残る月数はわずか二月(ふたつき)のみ。
結局、2007年の新車販売台数は、順調に推移しても精々344万台の予測と、前年からおおよそ7パーセント近く低下する見込みである。

●そんななかトヨタは、軽自動車を除く同月10月の国内新車販売シェアで51.5パーセントと、月間で初の5割超を達成した。
これまでトヨタの単月シェアは、2006年11月の49.4パーセントが最高値だったので、13もの国内メーカーがひしめく日本の自動車マーケットにおいて、いよいよ勝ち組・負け組が明確になってきたという見方もあるようだ。
しかしどれどれと、いざ蓋を開けてみると、トヨタ単独で月に1車種以上のペースで新車を投入しているゆえの結果であると言えなくもない。

〜そろそろメーカー満身の一台が見たい〜
●これまで一般的には、一台の自動車開発にあたって、大きな投入資本や永い開発期間が掛かるものだった。
それが近年では、プラットフォームの共通化や、自動車生産技術の発達で、腰上の車両デザイン変更の自由度が大きく高まってきていることから、比較的企業体力のあるトヨタがひとり、同一基本性能を持つ骨格へ金太郎飴的に様々なボディ架装しているだけ。

●そうして耐久消費財の典型である自動車が、手を変え、品を変え式に、次々と市場に投入されることで、消費者の製品選択の幅は広がっているものの、自動車メーカーがじっくり本腰を据えて造った満身の一台を、そろそろ見たい気がしているのは、おそらく筆者だけではないだろう。

●また実際には、トヨタ単一の国内販売数でも160万台半ばと、過去の実績を確実に下回っている訳で、日本国内の自動車マーケット環境は、決して順風満帆と言えない。むしろ日本国内市場の低迷は一層深くなっており、むしろ海外依存の体質がより強まっている。

〜国内市場が自動車開発の核であるべき〜
●こうした日本メーカーの状況を、より細かくウオッチするためには、国際的に極めて特殊な環境下で日本独自の規格車である「軽自動車」を作り続けてきたコンパクトカーメーカーを診れば良い。
例えば、先のトヨタの傘下にあるダイハツ工業は、2007年9月の中間発表によると4月〜9月の車両総販売台数で63万7000台と、前年同期比0.9パーセント増となっている。

●けれども実のところその内訳は、国内が26万7000台と3パーセント減である一方、海外では17万9000台で8.3パーセント増。受託生産車が17万5000台で0.6パーセント減。OEM車が1万5000台で同11.4パーセント増となっている。

●特に上記のなかで「OEM車」という区分は、同社が活性化させているインドネシアでのOEM供給による増加分にあたる。
つまるところ日本の自動車メーカー各社は、国内市場の低調を、現時点では比較的好調な海外販売でカバーする図式が固まりつつある。

●このような動きはマツダの欧州販売好調など、日本メーカー全体のものだ。
しかし原油高やサブプライム・ショックに伴う米国景気の減速懸念から、特に対米事業は不透明感が高く、海外マーケット依存が日本の自動車メーカーや日本経済全体を救うことになるかには、一抹の疑問がある。

〜団塊世代外にも注目せよ〜
●むしろ日本国内消費がさらに縮小し、若年層のクルマ離れがますます加速することは危険で、若者が買えるクルマが一層喪失していくマイナススパイラル環境は、早急に打開するべき段階に来ている。
そもそも現代のクルマが抱える問題点は、自動車を走らせる交通環境の悪化や維持費の高騰など複合的な要素が絡み合っての結果だ。

●海の向こうの米国で、ライトトラック(日本国内で云うミニバン、SUV、クロスオーバー車が該当)が若者にもてはやされているのは、実のところ廉価な維持費が下支えしているからで、こうした事実は、今の国内自動車マーケットを打開するためのヒントになり得る事柄である。
そもそも自動車がクルマとしての機能を進化させるため安全装備の搭載は必須であるが、多くの日本車たちは、そうではない搭載機能を付与し過ぎて、あまりに高価格になり過ぎている。

〜メーカーは懐古趣味に走るべからず〜
●東京モーターショーで展示された「NISSAN GT-R」に続き、トヨタもレクサスブランドのスーパースポーツカーのリリースを予定しており、この流れにホンダも程なく追従するだろう。
しかし若者に必要とされているクルマは、そうした「懐古趣味的な憧れ」が出発点では無く、現実社会を支えている若年層が「乗って夢を描ける」クルマであるべきなのだ。

●もっとありていに云うと自動車メーカーが、スポーツカーを造らなくなったのは、若年層がスポーツカーを買わなくなったからであり、「スポーツカーを出せば若者が飛びつくだろう」という発想自体が、若者の求めるベネフィットを考えていく上で、原因と結果を逆転して捉えてしまっている。

●考えてみれば、若者の強力なカルチャーのひとつである音楽シーンでも、クルマが登場する場面は確実に減ってきている。
それだけクルマの世界感は、若者文化とは大きく掛け離れてしまっている。結局、自動車メーカーの考え方自体が、現代の流れと大きく逆行している様に思えてならないのだ。

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2007/09/03

自動車ディーラーが消える日

〜好景気でもクルマは買わない・売れない時代〜
●2007年の日本経済は企業収益を中核に大変な好景気であると言われている。けれども自動車業界において、新車販売台数の低迷は依然下げ止まる気配を見せない。
それは自動車マーケットにまつわる関連の数値データを細かく紐解いていくと明白だ。

●例えば自販連発表の月間登録車(除・軽自動車)は24ヶ月連続の減少。上半期台数(1〜6月)での累積数値も178万8,440台と、その成績は1977年上期(174万2,109台)以来、実に30年ぶりの低レベルにある。
さらにバブル崩壊以降に若干名の波乱はあったものの、永らく地方都市を舞台に辛うじて好調を維持してきた軽自動車市場も、実に4年ぶりの減少傾向へと、その舵をゆっくりと切り始めている。

〜感動体験を与えられないカーマーケットのジレンマ〜
●実際、人類の経済水準が永遠に上昇していくという発想はすでに20世紀で幕が降りた。
もはやそれは幸福な資本主義理論で組み立てた砂の城でしかなく、そもそも資本主義の真理を考えれば、自動車登録台数が未来永劫、常に加算されていくとは筆者も考えていない。

●ただ自動車マーケットの低迷は、環境問題や交通政策の悪化に加え、過去に幾つもの大きなエクスペリエンスを提供してきた自動車マーケットそのものが行き詰まりを見せ始めている証拠ではないかと思えてならない。

〜クルマを通して新しいライフスタイルを打ち立てるべき〜
●このエクスペリエンスとは「新たな感動」や「体験」という概念だ。
例えば、今やカーオーディオの世界をも駆逐していく勢いのApple社のipodは、かつてソニーが提案した「音楽を屋外に持ち出す」という考え方に「ポッドキャスティグ」という新たな体験をさらに付け加えることで、人々がそれまで図らずも妥協を重ねてきたものを打ち破る音楽スタイルを打ち立て、既存の社会環境を大きく変革させた。

〜クルマそのものが使えない、愉しめない妥協の産物に〜
●しかし今の自動車環境は、それらとまったく逆行している。
つまりこれまでは人々が妥協してきたものをことごとく打ち破り続け、「移動することの自由を得る素晴らしさを提供し続けてきた自動車」が、今は逆に「使えない理由」を指折り数えられる存在になってしまい、「移動の自由は自動車で得なくてもイイ」と、むしろ妥協の産物化してしまう時代に入ってきているように見えるのである。

〜延々と冷え込み続ける個人需要を打破せよ〜
●その根拠のひとつとしてクルマに対する個人需要が一向に改善されないことがある。
今日の経済社会の「需要動向」を、より小さなグループ単位で細分化していくと、最後は個々の家計消費に行き着く。そしてそうした家計消費における動機付けにおいて妥協の産物化という位置づけは、自動車を買うことへのマインドの低迷につながる。

●それが結果、クルマに対する購入機会が延々と後回しになっている原因ではないか。
こうした考えには他にも多様なファクターがあるとは思うが、自動車を手に入れるための複雑な手順も、そうした「妥協すること」への段階への一要因になるのだろう。

〜日本独自の市場性・課題を克服することへと動け〜
●というのは、海の向こうの米国で消費者が購入したいと思うクルマがある場合、思い立った当日にディーラーの展示場から乗って帰ることが可能だからだ。

●一方、日本のディーラーでは、店頭で例え「そのクルマを欲しい」と思っても、希望のクルマが届けられるのは、実発注後に遠く離れた地方の生産工場で組み立てられた後の数週間・数ヶ月後の話になってしまう。
さらにナンバー取得までの面倒な手続きルートも踏まないと、お目当てのクルマの入手は絶対に不可能な環境である。

〜クルマ好きを冷めさせない配慮が今の環境にあるか?〜
●つまるところ自動車を買い入れる際、日本の消費者の購入マインドは、どうしても冷え込み気味になる訳だ。
ただ自動車購入ルートの障壁を改革・削減していくことは、政府による管理体制の徹底がマストな日本社会において、解消不可能だろう。
ならば別の解決策を見つけなければならない。

●その突破口のひとつが、消費者を冷めさせないための個々のクルマのブランド化である。例え高級車とは謳っていても結局は、不特定多数へ向けた極めてsocialな販売スタイルを取る日本国内市場における「トヨタ・レクサス」もこれにあたる。

〜メーカーとのダイレクト化で自動車ディーラーは蚊帳の外へ〜
●そうした自動車商品のブランド化というのは、いわば消費マーケット上で商品情報をメーカーが主導してコントロールすることにより、「買い手側の口コミ」を醸成していくことである。
これがクルマの品質保証になり、ひいてはこの付加価値が、熱しやすくて冷めてやすい消費者の購買リスクを解消する役割も担う。

●今後、ハードディスクレコーダーの普及などハードウェア面の技術革新に加え、ソフト側でも情報伝達手段の多様化により、テレビコマーシャルの訴求力が大きく低下するだろうから、商品性を伝える伝道師役としてリアル店舗の存在価値はある程度必要にはなる。

●しかし一方で個々のクルマのブランド化が充分に確立し、インターネットを介したBTO体制が完備してしまえば、現在の自動車ディーラー数は縮小しなければならず、求められる役割も大きく様変わりするだろう。

〜過酷になる自動車ディーラーの存在価値と役割〜
BTO販売による消費者とメーカーとのダイレクト化で、これまでメーカーからの車両ブランドの割り当ての沿って、地道な販売計画を立てていけば、今日までメーカーによる車種割り当てを介して成り立っていたディーラー網が崩れ、どの車種を取り扱っても良い戦国時代を迎える。
このためトヨタ日産ホンダを筆頭に、各傘下ディーラーは近隣店舗との生き残り競争の矢面に立たされることになるのだ。

〜自動車ディーラーが消滅する日〜
●思えばかつて自動車メーカー間による資本統合で、「400万台クラブを目指した生き残り競争が始まった」と報道されたことがあった。しかし実際にはそうした生存競争は想定していたほど激しいものでなく、むしろ統合を廃止する動きも一部にみられるほど。

●むしろ今後は、クルマの買い替えサイクルの長期化により代替期間の延長分だけ耐久性の高い上級車移行の可能性が出ていることから、軽自動車トップに君臨し続けてきた王者スズキが軽自動車マーケットからの拡大を求めて普通自動車市場へ本格進出を果たすなど、自動車マーケットの優勝劣敗のシナリオはこれからが本当の過当競争に突入する。

●もともとメーカー系の正規自動車ディーラーといっても、基は地域の資産家による独立経営が本質だ。かねてより語られてきた自動車メーカーの生き残りの行方はもとより、むしろあなたの身近にある馴染みのディーラーが突然消失する事態もあながち噂レベルでは終わりそうでない勢いである。

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2006/08/23

熾烈なメーカー系販社と独立系中古車店舗網のバトル

●近年、クルマの買い換えサイクルが大きく伸びたことから、自動車1台あたりの使用年数は、年を追う毎に長期化している。
それはクルマがより永く使われることで、回り回って、おのずと登録台数が減少する自販連(日本自動車販売協会連合会)7月度発表の中古車登録台数でも明らかだ。
中古車登録台数の具体的な下落数は、前年同月比8.6%減の39万6057台と、ここのところ4カ月連続で先細り傾向に歯止めが掛からない。なかでも乗用車の下落率は9.7%減と最も深刻である。

●同背景は、自動車ディーラーの新車販売実績の低迷により、相対的に中古車登録台数の原資となる下取り車両の数が大きく減少したことにある。ただこの問題は、実のところそれほど単純ではない。
というのは、昨今のガソリン価格高騰も、新車の買い控え動機に対する強い抑制要素になっているからだ。つまり、この状況を的確に説明するには、これら複合的な要素をひとつひとつ、解きほぐして行かなければならない。

●ただ確実に言えることがひとつある。それは、現段階の国内中古車市場が大変、過酷な環境下にあるということだ。
しかしその見方を、自動車の「販売総額換算」という別の確度から眺めてみると、先の過酷な環境下とはまったく異なるデータが浮かび上がる。
この中古車の販売総額という数値を見ると、今でも、新車販売総額の3割相当に匹敵する数字を中古車マーケットが叩き出していることが判明するからである。
しかしそもそも販売車両の絶対的なタマ不足に悩んでいるはずの同市場。なのに、これだけの高成績を出し続けているというのは何故なのか。
実はその背景には、日本の中古車市場独特の流通構造に隠されている。

●現在、日本国内の中古車マーケットで生息する中古車販売店は、全国で実に1万3000社以上と言われている。
またその車両販売形態はまさに多種多様で、メーカー直結のカーディーラーなど、新車販売を兼業しているところを筆頭に、高級車限定や輸入車限定、さらにはスポーツカーやSUV車だけなど、特定車だけの販売に特化する拠点など実に多彩だ。
一方、商材の仕入れルートに関しては、いすれの店舗も共通した場所で車両調達を行っている。

●大昔といってもホンの20年位前まで、市場販売用中古車の調達経路は、横のつながりがある新車販売店同士の融通や、販売店主が持つ独自のコネクションを駆使するなど、意外にそのルートは限られていた。
しかし昨今は、中古車流通専業間による競り市場が発達。今は全国各地のオークション会場から、ネットを通して車両を調達、それを店頭に並べるのが一般的となっている。

●そもそも中古車取引というのは、たとえ同一車種でも仕様や状態に違いがある「一物一価」の世界だ。
このため全国各地で、プロたちのための中古車競売のしくみが確立。今日もオークション会場で、中古車両の取引が行われている。また近年では、衛星通信と地上回線を組み合わせたバーチャルな中古車オークション市場も活発化している。
ここまで車両調達が簡素化・イージ化されたことから、1990年代以降、特に新車ディーラーはそれまでは新車を売るための実質的な値引きでしかなかった中古車事業に俄然注力し始めた。

●これには、近年の国内新車販売台数が低迷していることにもその一因がある。というのは、新車販売数が前年割れを繰り返す程、低迷していることから、2000年初頭は各ディーラー共に値引き競争に走らざる負えなかったかったためで、新車販売の利益率が10%以下になってしまうことすら決して珍しいことではなかったからである。
それに対して中古車販売の平均マージンは、実に30〜50%と大変な旨みを持っている。

●旨みの大きい中古車販売ビジネスにとって、唯一の関門はひとつだけだ。それは、玉石混肴状態の中古車の競り市場から、いかに人気車を仕入れられるかにある。
このためトヨタ自動車は「T—UP」を、日産自動車は「カウゾー」などドライバーから直取引で商材調達に走った。
ただこれはどれも、先行する独立系買い取り店を模したビジネスモデルの模倣である。

●かつては広大な自動車業界において、ビジネスモデルの発掘でも常に時代をリードし続けてきたトヨタなどの自動車メーカーだが、近年は、中古車販売戦略やクイック板金修理サービスなどで、中小事業者の後追いを演じ続けている。
少なくとも自動車流通で、大手自動車メーカーがその覇権を握る時代は終焉を迎えつつあるかのようだ。
しかも未来の中古車マーケットでは、一般消費者同士が自ら個人のXMLデータを検索し合って、互いに目当てのクルマを直取引で買う時代も刻々と近づいている。

●実際、世界最大のネットオークションである米イーベイでは、常時1万台を超える中古車が出品されており、日本でもネットオークション最大手のヤフーでの中古車取引は活況を極めている。
つまり古き良き20世紀とは異なり、これからはインターネット網やWeb2.0の普及で、大資本だからといってそれがかならずしも勝者とならない時代を迎えているのである。

●もはやこの流れをせき止めることは難しい。ことによると近しい未来には、今日全盛の大手中古車情報雑誌がその役割を突然終える時期が来るのかも知れないのだ。
そのなかで当面、先行する独立系中古車ブランドとの競争に、大手自動車メーカーが想定通りに打ち勝てるのかどうか。当面、その勝負の行方をじっくり静観したい。

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2006/07/31

トヨタ・レクサスを阻む日本の壁

●米国建国以来の快挙を日本市場で再び

新世紀の到来を目前にした米国内で、建国以来初の事件が起こった。
それは同国の自動車市場でピック3を押しのけ、日本の「Lexus」が高級車マーケットを征したことだ。そのレクサスが次なる目標にしたのが、永年ドイツ車の草刈り場となってきた日本の高級車市場だ。
トヨタは、2004年のデトロイトショーで新型の4WDセダン「GS」を発表。翌2005年からは、日本を舞台にレクサス網の本格展開を開始している。

●販売計画に到底届かない日本のレクサス
しかしむしろ、こうした動きは、かえってドイツ車の販売台数を大きく伸ばす結果を招いている(メルセデス前年比132.5%、BMW前年比122.9%増)。
一方、日本のレクサス車販売は昨年末の販売累計で1万293台。今年上半期でも約1万600台余りと、当初計画のほぼ半分にしか達していない。
実のところこれまで、新車発表で着実な計画数字を発表してきたトヨタが目標値をこれだけ大きく外すケースは希だ。2005年8月のブランド立ち上げ時に公言した「年末までに販売2万台、受注2万5000台」は、トヨタが考えていた以上の難関だったようだ。

●主力車種を欠くなか米国帰りの神通力も通じず
ちなみに目下のところ、日本国内におけるレクサス網の主力販売車種は、米国における「RX」ことハリアーや「ES」ことウインダムとは違う。日本国内ではアルテッツァと呼ばれていた「IS」や、先の「GS」が主力だ。
つまり対象国が違えば、同じレクサスブランドでも主力販売車種は大きく違うのである。米国・日本のいずれの市場も対象は富裕層ではあるが、主力の販売車種が違い米国は、比較的大量販売が望み易い環境にある。

●苦戦しているなかでも強気の販売計画を堅持
加えてレクサスが苦戦している理由はもうひとつある。
それは最高峰車種「LS」の投入が遅れていることだ。
フラッグシップモデルを欠く日本のレクサスは立ち上げ当初、対象消費者を絞り易い雑誌広告を中心にイメージ訴求のみに終始した。
それでもイメージ先行策は一定の功を博し、一時期は販売目標も達成したのだが、ISの最低価格帯でも販売価格は400万円に迫るため、契約の意思決定に時間が掛かかり販売台数が伸びなかった経緯がある。
こうしたなか2006年1月、GS発表後2年目を迎えたデトロイトショーで待ち焦がれていたLSが遂に発表。これを受けてトヨタは今年のレクサス販売計画を4万台とし、いまだ強気の販売設定を崩していない。

●ソフトを売るという新ビジネスが強気の理由
その強気の理由のひとつは、レクサスがこれまでの自動車ブランドとしては「希有な商品性」を備えていることにある。
というのは、レクサスというクルマを持つ喜びを、「クルマ以外のもので提供する」というスタンスを持っているのである。
例えば搭載されるハンズフリー電話は、24時間365日、レクサスオーナー専用のコールセンターにつながる仕組み。コールセンターでは、自動車の各種設定や操作方について聞くだけに止まらず、レストランやホテルの紹介や予約、航空券の手配までしてくれる上、万一クルマが故障すると新幹線や飛行機プレミアムシートも。宿泊するのであれば帝国ホテルクラスの宿泊費が保証される。
要はかつてロールスなど超高級車で行われていたサービスが、現代のIT環境を駆使して受けられるのだ。
つまりもはやレクサスは「自動車というモノを売る」のではなく、近年の高額不動産物件と同様のスタンスで、自動車生活という「ライフスタイルを売る」というスタンスなのである。

●最上級のトヨタ車がレクサスであることを証明せよ
こうしたサービスはかつて日本のヤナセにあったし、昔にNSXをホンダが始めた時、NSXオーナーがホスピタリティを求めて足繁く店頭に訪れ、1台でも販売台数を稼がなければならないセールスは対応に苦慮したという話もある。
しかしNSXを買うオーナーは他にもフェラーリやベントレーなどの高級車を持っているケースが多いはずで、そうしたオーナーはクルマを買った後のケアの方が、むしろクルマそのものよりも重要だったりする訳だ。
けれどもそんなすばらしいケアがあったとしても、日本でのレクサスは当面苦戦を強いられるはずだ。
というのは結局、レクサスは詰まるところトヨタ車だからだ。レクサスが日本で成功するためには、リコール問題で揺れるトヨタ自身が、このクルマは最上級のトヨタ車であると保証できるかどうかにある。

●改めて問われるモノ造りメーカーの志とひたむきさ
また同じレクサスでも、2005年8月に発売されたかつてのソアラである「SC」は、発売後わずか2カ月で約700台の販売台数をマーク。2004年度の販売実績だった696台を大きく超えた。
SCは変速機を5速から6速に改良し、テレマティクス機器を搭載し旧来より50万円高い車両価格680万円で売り出したもの。一方アリストをベースに内外装やエンジンなどを大幅に替え、価格を150万円以上引き上げたGSは、小幅変更しかしていないSCに販売目標であえなく敗れ去った。
それはなぜか。そもそもSCの方がモノ造りに迷いがなく、ハードウェアとしてのコンセプトや志が消費者にとってピュアで判り易かったからではないのか。

●日本市場の壁を越えること。それが世界一への突破口になる
メルセデスやBMWが当面の強力なライバルには違いはないが、日本市場には米国とは違う日本独自のクルマ文化がある。
アメリカで売れているから、そのまま日本に持ち込めばイイと考えているところは疑問で「量より質」を強調してもコンシューマがついてこなければ空回りする。
アルファベット2文字となった車名など、いずれも日本市場に合わせたマーケティング戦略を組まなかったことに原因があると思えてならないのである。
あくまでも比較論ではあるが、同じモノ造り企業で世界ブランドとしてかつては成功した国内企業にソニーがある。
そのソニーも近年、「ハードウエアで世界をリードする」という創業時の目標が薄らいでいるように見える。事実ソニーの新製品からは、かつての「ウォークマン」や「プレステ」のように市場を揺るがす夢の大きさが伝わってこない。
翻ってレクサスが北米で幾ら成功したとしても日本国内の壁は依然厚い。しかしそれを超えることが出来なければトヨタは本当の世界一にはなれないだろう。

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2005/07/18

真の国際競争にさらされる日本の自動車産業

●独・Hella(ヘラー)が、後付け用コーナリングライト「DynaView Evo2」を開発した。
このDynaView Evo2は、直径90mmのハロゲンライトを照射機能に、エンジンルームへセンサー役を担うECUユニットを設置・連動させ進行方向を動的に照射。自動車の安全性を高める機能パーツだ。

●またDynaView Evo2は車速連動タイプなので、カーブ区間が終わると徐々に減光する機能も備える。
似たようなコーナリングライトは、新車装着でなら日本車にも存在しているが、後付けユニットとしては世界初。Hellaではこうした独自の開発商品を足掛かりにするなどで、日本マーケット進出の方向性を模索し始めているようだ。

●そんなHellaについては一部の欧州車マニアを除くと、日本ではあまり知られていないようなのだが、自動車生誕地であるドイツにおいて自動車そのものがまだ異端だった1889年、同国リップスタッド市で産声をあげたヘッドライトブランドとして世界ではよく知られている。
以来1世紀以上の間、人類の未来を切り拓く新たな乗り物の行方を常に照らし続けてきた

●さらに近年は、自動車用電子部品や同制御用ソフトウエアで高い開発能力を発揮。社員総数2万人超・4000億円の事業売り上げを背景に、欧米だけでなく遠く南半球や中米でも自動車電子部品のトップブランドとして君臨。
去る2002年には日本のスタンレーとの協業を発表した自動車エレクトロニクス企業だ。

●昨今は日本の自動車業界もハイブリッドや自動運転技術で注目されているが、実のところ「走る」「曲がる」「止まる」という自動車の基礎技術において、Hellaを筆頭とする欧州陣営は未だ日本メーカーにはない独自資産を持っている。

●というのは、日本が軍事需要や政治的な目的のためではなく、純粋に自動車産業に精力を注ぎ始めたのは国民車構想を打ち出した1955年以降から。
対して欧米の2世紀を超える試行錯誤の蓄積は、日本人に先駆け努力をしてきただけに歴史の重みがある。
このため日本人技術者が欧州部品メーカーのR&Dへ訪問するなどは今も活発に行われているほどだ。

●さてそんなHellaの日本市場への取り組みは、同社グループ内でアジアエリアを担うヘラー・アジア・パシフィックが1995年、東京港区に日本駐在事務所を開設してから大きく加速されている。
具体的には全世界で生産される日本車の組み込み部品事業や、日本国内仕様車の開発に関わるなど、自動車メーカー各社の技術研究所とのパイプは日増しに太く強固になりつつある。

●特に近年は、ユビキタス環境を支える電磁アクチュエータやモジュールユニットの開発に熱心で、一般のカーオーナーには見えない黒子的な立場で鋭意活動中だ。ちなみにHella日本駐在事務局では、スタッフに占める日本人の占有比率が高く、他の海外資本とはひと味違う戦略をとっていることも大きな特徴のひとつだ。

●20世紀終盤に日本国内で巻き起こった規制撤廃の流れは、今日を迎えこうした欧州企業の直接投資を誘引している。そしてこれを受けた多く欧州企業では、自社ブランドの訴求力や浸透力の向上を目的に、日本市場に並々ならぬ意欲を持っているのである。
日本企業はそうしたなかで国内メーカーとの激しい価格&技術競争に勝ち残るだけでなく、続々参入を果たしてくる欧州企業との対決にも挑まなければならないようだ。

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2005/07/07

ハマー H3誕生を機に日本のラグジー現象急変の兆し

●軍事車両を民生用仕立てにしたことで生まれたH1ことHUMMERだが、以降、次世代モデルとなったH2は、時の「LUXURY・ラグジー」という新たな自動車ドレスアップの流行に伴い、米国や日本で爆発的な人気を獲得した。その同シリーズが全長4720mm×全幅1970mm×全高1850mmとさらに小型化され、新型H3として近く日本の街を闊歩する。

●ここ数年、ヒップポップシ−ンのブレークとともに日本国内に初上陸を果したLA LUXURY CARことLUXURYは、そもそも米国のプロバスケットボールプレーヤーやブラックミュージックのアーティストたちが、東海岸のアングロサクソン系セレブとは対極を成す新しい自己主張の形として編み出したものだ。
 
●日本でもこの約束事はシッカリ守られているようで、こういう愉しみ方を満喫するユーザーたちは、ベース車両にエスカレードなどの米国製の大型SUVをチョイス。24インチを超える大径ホイールを履き、一方で室内は複数のマルチモニターに加え大型のパワーアンプを搭載するなど、独自の作法を硬く守っている。

●しかし昨今こうしたブームも大きな曲り角を迎えた。事実、コアユーザーに向けた大径ホイールの売り上げは、ここのところ右上がりの上昇推移がある程度ゆるやかになっている。正直一般ユーザーにとって現在のアピアランスではマイカーにする気は起きないのだろう。そんな中で登場したH3は、そのボディサイズと価格が日本製大型SUVと同格(449万4000円・タイプS・5MT)というレベルに落ち着いている。

●こうした流れから考えてLUXURYというブームが、早くも終焉を迎えていると考えるのはあまりに早計だろう。確かにコアユーザー向けの戦略商品はスタンダードなコミュニティを一巡してしまったのかも知れないが、チョイスされるクルマの選択肢は広がるなど、比較的濃く狭い社会的ブームの後にはたいてい大きなマーケットにおけるブレイクの連鎖が始まる。

●そのきっかけが今回のH3であり、トヨタがいよいよ始動させるレクサスブランドもこうした次世代LUXURYの起爆剤になる可能性が高い。それは米国製大形SUVをベースに愉しむ現在のコア層とは違うものになるかも知れないが、そもそも市場全体の大きく動かすブームは最初のコアな流行とはたいてい大きく異なるものだ。

●実際、日本国内でこうしたブームの火付け役となった千葉のブルーワークスでは、ここ2年位前からユーロ系ホイールを使用した新しいラグジーの可能性を模索している。目下のところそんな日本版LUXURYのブレークは、まだやってきてはいないのだが、この夏以降新しい可能性が華開く可能性が高いのではないかと思っている。

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