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2010/01/07

新しいコンパクトカーの姿を探せ

〜デリーオートエキスポ〜
●2010年1月1日付で、VW業務窓口を浜松本社ならびにドイツに設置したスズキは、単一国に於ける自動車生産数100万台を狙いインド投資を繰り広げてきた。
結果、既にインド国内の販売実績は72万台(輸出を含めた販売台数では前年比3.6%増の79万2,167台)。乗用車市場では5割のシェアを誇るまでになっている。
そのインドで昨日から自動車ショーの祭典「デリーオートエキスポ」が開催されている。
実は、同国の空の玄関口であるインディラ・ガンジー国際空港から、デリーオートエキスポが行われているニューデリー市に向かう幹線道途中には、インド国内シェアトップを誇るマルチ・スズキに相応しく、かつ真新しい本社ビルが見える。

〜トップメーカーとしてのスズキ〜
●世界の自動車メーカーの首脳たちは、その佇まいをデリーオートエキスポに向かう車窓から眺めながら、「1981年にマルチ・ウドヨグとして発足、1983年に同国ハリヤナ州グルガオン工場で自動車生産を開始。以来着実な成長でインド国内で強固な信頼を獲得するに至ったスズキの躍進」を思い知り、市場浸透率の深さにさらなる想いを馳せるに違いない。
さて、そんな本社ビル建設だけなく、スズキにとって2009年は、インドを代表し、かつ牽引する押しも押されぬトップメーカーとしての存在感を世界に与えた年であった。

〜もはや中小企業とは言わせない〜
●昨夏は同国の首都、ニューデリー北西に位置する「ハリヤナ州ロータク」の産業モデル都市に、280万平方メートルに及ぶ広大な区画を取得。
2015年完成を照準に、衝突実験設備や風洞実験設備の他、最新のテストコースを備えた自社R&Dセンターを設置する計画を発表した。
スズキはこのインドの地を、自動車開発のハブに見立てて世界展開を視野に入れた小型車造りの基地開発を目指し始めたのである。

〜日本は海外からクルマを買う時代に〜
●日産が次期マーチを、アジア発信の国際商品とする計画を打ち出し、その完成車を日本国内に輸出する構えを見せているように、スズキは、インドに於けるマルチ・スズキが持つロータクR&Dセンターをハブに、既に同社の自動車生産拠点であるマネサール、グルガオンを繋ぎ、デリーオートエキスポ開催当日に自動車販売打数トップに躍り出た中国と、伏兵、韓国を迎え撃つ。

〜小型車だけじゃないスズキのチカラ〜
●スズキの日本ならびに米国に向けた動きでは、先に日米同時発売で話題を提供したキザシが順調に滑り出している。
同車の特徴は、足回りの特性など従来のスズキ車にない欧州車テイストにある。正直、飾り気の無い装飾等、内外装共にかなり日本車離れしたインターフェイスで、独車や北欧車を志向する向きには歓迎される手堅い造りが売り。また同車へは近々、GMと共同開発したハイブリッドユニットが搭載される見込みでもある。

〜強固なインド国内のサービス拠点〜
●加えてスズキで興味をそそるのは、戦略上のイコールパートナーとなったVWとの関係だ。
そもそもVWは、インド国内に満足な自動車インフラのサービスネットワークを持たないから、自動車開発のパートナーとしてのスズキの存在にも増して、おそらく延べ1000拠点に迫るマルチ・スズキのサービス網に魅力を感じているのであろう。
しかし当のスズキは、インドオートエキスポで、同国の国家プロジェクトを背景に開発された電気自動車「バーサ」を筆頭に、ハイブリッド車「SX4ハイブリッド」や、6人乗り多目的車「コンセプトR3」を発表。
来る2015年には販売台数で400万規模に倍増すると見られるインド市場に於いては、VWと協調していくというよりも、世界の自動車メーカーを向こうに回して、過酷な生存競争に挑む構えが見える。

〜スズキを追う立場のトヨタ〜
●一方、世界規模でトップシェアを誇るトヨタは、インドの国内シェアは僅か2.3パーセントしかない。
トヨタは、デリーオートエキスポで、アジア圏での部品調達率を半分を大きく超えるまでに引き上げた1500ccセダンと、1200ccハッチバック車「エティオス」と共に、2010年の発売を決めた「プリウス」を繰り出し、インド国内の自動車販売実績倍増を目指している。
またホンダは、フィットのプラットフォームを設計思想の基礎に据え、製造コストの大幅削減を達成した1000ccクラスのコンパクトカーをぶつけていく構えだ。
対するスズキは、ドイツ約2割増、フランス約5割増と、一部のマーケットでは依然、好調さを見せる欧州対策車としてのAスターや、リッツ(スプラッシュ)を相次いでリリース。日本国内でのライバルメーカー各社は、ここインド市場でも手強いライバルとして、疾走するスズキのシェア5割の切り崩しを狙う。

〜見えてきた自由貿易圏の夢〜
●ちなみに今後、アジア域内は、インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)の他、インドと韓国の経済連携協定(EPA)も発効、日本もASEANとEPAを発効。
中国と韓国は、ASEANとの間で大半の品目の関税を相互撤廃する流れから、このASEANを軸にした約32億人という巨大市場が「自由貿易圏」という大きな夢に向かっていよいよ動き始める。
目下、現時点で世界シェアトップのトヨタは、ダイハツ工業・日野自動車を除く2010年の世界生産計画において、2009年実績見込み比109万台増の749万台(北米2009比30万台増の156万台。欧州同5万台増の57万台。中国同18万台増の79万台、中国を除くアジアは同13万台増の95万台)を目指しているが、中期・長期的視野から見ると、ASEANを軸とした域内は、貿易・投資競争に大きな弾みがつく。従って中国自動車メーカーの躍進は確実である。日本の自動車メーカーのアジア戦略にも大きな影響を与えていくだろう。

〜コンパクトカーメーカーが消えていく〜
●そうしたなか日本国内ではスポーツ車メーカーでありながらも、コンパクトカーメーカーの一社でもあったスバルの動きを眺めると一抹の寂しさがつきまとう。
それは資本関係のあるトヨタとの強固な連携体制の結果、とは言え、折角、三菱自動車と並んで2009年に量産EVのプラグインステラを世に問い、この2010年には200台のEV販売を計画しているにもかかわらず、ステラ自体の生産が2011年6月まで。さらにすべての軽自動車の生産が2012年3月を以て完全に潰えてしまうからだ。

〜日本の小さなクルマが世界を牽引する〜
●日本の軽自動車は、鎖国的とも言える限定市場のなかでの極めてドメスティックなセグメントでしかないのだが、開発思想やコスト削減手法、またクルマ造りの考え方では、今後、「現行の小型車よりは若干下を目指す」とする世界戦略車の礎になりえるものと思う。
ただもはや日本国内市場に於いても、660ccという現在の軽自動車の排気量区分は、決して最適とは言えないから、この際、EV搭載も含めた出力別による税法優遇措置を導入するなど、まったく新しい視点を携えて、世界市場でも勝負することのできる新しいコンパクトカーの姿を追求して欲しいものと、業界の書き手としてだけではなく、いち自動車ファンのひとりとしても、一重に願うばかりだ。

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