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2008/11/02

エネルギー制御を巡るしたたかな企業戦略

〜三洋電機が選んだ選択と集中〜
●11月を迎える直前になって、パナソニックが三洋電機を合併するという噂が電機業界を駆け巡った。
 その話題の主である三洋電機は、この数年来、業績低迷の要因となっていた事業を躊躇なく切り離し、本来得意にしていた業務機器部門と共に、太陽電池や二次電池事業に集中してきている。

〜蓄電池で世界一位のシェアを獲得〜
●このため同領域で同社は、日本国内での競争を抜け出し、国際的に極めて高い技術力を持つに至っている。
 特にリチウムイオン電池では、もはや国内業界大手の「パナソニックを押さえる」という次元ではなく、文字通り世界一のシェアを握っているのである。

〜太陽電池で敗北したパナソニック〜
●つまり三洋電機としては、例え電機業界の雄「パナソニック」が相手と言えども、もはや他社に買収されなければならない理由や弱みはあまり持ち合わせていない。
 一方、パナソニックは同獲得劇の実現で得られるであろう効果は計り知れない。
というのは、太陽電池開発競争で、既にパナソニックは事実上敗北を喫していて、国際的なR&D競争から清く撤退しているからである。
このためパナソニックにとっては、三洋電機の卓越した技術は、国際環境において極めて短期間で、国際競争力を持つための切り札となる。

〜両者に含まれる合従連衡の弊害〜
●ただし合従連衡の形次第では、お互いにマイナス要因が発生しないとも限らないところもある。
というのは未だ双方の企業共に総合電機メーカーとして家電事業や半導体事業で、激しく競合している領域が確実に存在しているからである。
 このことから完全合併しても、単純に売上が2倍にはならない。
けれども近年のこうした巨大企業の合併・合従ではそうした経済効果だけが、決して焦点ではなかったりする。

〜経済環境だけではない理由を探る〜
●例えば企業体力として近年、俄然注目を集めている領域には、個々企業の持つ「特許数」や「特許内容」も大きなポイントになるからだ。
日本の特許庁行政年次報告による2005年の実績では、パナソニックが申請特許数で15600件余。他方、三洋電機の出願件数は3400件余だ。
 その内容は、今回話題となっているリチウムイオン電池関連の特許において、三洋電機、パナソニック、ソニーが三強体制となっている。

〜次世代エネルギー制御の核を握る〜
●一方自動車分野で、三洋電機は今春以降、常に台風の目であり続けている。
 今年5月末には来る2015年までのハイブリッド車用のリチウムイオン電池事業に約800億円の投資計画を発表。独フォルクスワーゲンと電池システムの共同開発に取り組む。
 加えて現在、自動車の実用バッテリーとして主流となっているニッケル水素電池に比べ、体積当たりの出力が2倍を超えるリチウムイオン電池開発にも精力的に取り組んでいる。

〜選択と集中が呼び込んだ成功〜
●三洋電機の自動車メーカーとの協業体制は、他にも数挙のいとまがなく、すでに米国フォードのHEVエスケープ・ハイブリッドにバッテリーシステムの供給を開始済。
また本田技術研究所ともHEV用高性能二次電池の共同開発を進め、欧州地域で永年、燃料電池自動車用のニッケル水素電池の開発提供をしてきたメルセデス・ベンツへは、Aクラス搭載への二次電池を供給。HEV用電池の共同開発でもパートナーシップを鋭意強化中である。

〜もはや三洋のライバルは世界になし〜
●先の800億円の事業投資発表の際に、三洋電機取締役副社長・執行役員部品事業担当の本間充氏は、「2020年に市場の40%のシェアを目指している。石油や天然ガスといった天然資源は、必ず枯渇する。当社はニカド電池、ニッケル水素電池、リチウム電池と44年間積み重ねてきた二次電池の開発実績があり、HEV用リチウムイオン電池の生産技術力面ではどの会社もライバルではない」と自信が溢れていた。

〜したたかさが企業の強さを呼び込む〜
●従ってこのニュースが、本当に実現するのであれば、合併による事業効率追求や、互いにないモノを出し合って手強いライバルに対抗しようという、消極的なスタンスでは決してあり得ない。
 もしも可能性があるのなら、そこには戦略的価値を見いだしてのことであろう。そういう意味では、目下マスメディアおいて話題の中心になっているパナソニックよりも、むしろ三洋電機の方にしたたかな計算があってのことだと筆者は思えてならない。

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