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2008/10/22

米国覇権の崩壊で自動車メーカーが成すべきこと

〜格付けだけで企業価値を判断できない〜
●自動車業界を含む社会経済は、企業の実態活動と別の「金融システムから与えられた信用」によって支えられてきた。
特に1990年代以降は、ムーディーズS&Pなどの格付け会社が、各企業の発行債券が約束どおり履行されるかについての確信性に基づき、AAAからDまでの段階的データに置き換えた格付けが、企業優劣を判断するためのよりどころとなってきたのである。

〜金融工学は米国が編み出した国家戦略〜
●実際には、個々企業の実態活動とは切り離された単なる予想でしかない「格付け」だが、それが高ければ高いほど対象企業は低利回りで債券を発行でき、IT化によってグローバル化した国際金融市場から低コストで資金を調達できる。
しかしかつては、こうした「格付けシステム」は近代資本主義社会におけるひとつの金融ツールでしかなかった。
この金融ツールに着目して独自の金融工学でデコレート。あらゆる債権債務を証券化して流通させるレバレッジ型の金融ビジネスを造りだしたのは他でもない米国だ。
つまるところこの画策は、モノ造りで日本に敗れ去った1980年代の米国が、国際金融市場での覇権を目指すために編み出したひとりよがりの戦略に過ぎない。

〜安易な利益拡張に飛びついた金融機関〜
●そもそもこうしたレバレッジ型の金融ビジネスとは異なり、市民から広く集めた預金を企業に融資し利益を出す従来型の金融ビジネスでは、どう努力したところで総利益(ROE)で15パーセントあたりが限界だったし、銀行は企業等へ貸し出した融資が返済されるまで一定の投資リスクを負わねばならなかった。
しかし証券をレバレッジ化する金融工学を使えば、総利益で100パーセントを超えることすら決して珍しいことではなく、融資債権を証券化してただちに売却できるため、投資リスクの要因も大幅に減少する。

〜国際的な金融バブルが瓦解していく〜
●米国が金融工学で時代を牽引し、国際社会が金融工学という金融錬金術にノーベル賞を与えてしまって以降、このアングロサクソン型レバレッジ金融は、天井知らずに拡大の一途を辿り、米国内で10兆ドル程度、世界規模でさえ30兆ドル程度と言われる金融市場の規模を、10兆億ドル以上に膨れあがらせ、国際環境下で擬似的な金融バブルを造りだした。

〜借金で利益を造り出す金融錬金術〜
●しかし遂に先の米国金融危機により、こうしたアングロサクソン型の金融ビジネスは破綻した。
この発端は既にご承知の通り、米国金利上昇で住宅ローンを返済できない国民が増えたことで住宅ローン債券を買い取らない金融機関が急増したからだが、これを受けて米国だけでなく、世界の金融業界も損失を被った際の対応をしておらず、格付けの信頼性は一瞬にして吹き飛んでしまったのである。

〜失敗のツケを負わない銀行、影響は市民に〜
●このような企業の実態活動とは遠く掛け離れたところで行われる金融錬金術は、企業運営上で有る意味不必要なマネーゲームであり、米国流の倫理観なき環境下で発生した同危機は、人災そのものである。
ただ、このレバレッジ経済の破綻と無縁な市民たちが対岸の火事としてこれを漫然と眺めているだけではとても危険だ。
もちろん金融危機が終わって再びレバレッジ型金融でケタ外れに儲かることはない。けれども投資家たちによるマネーゲーム失敗のツケを銀行などの金融市場が負うことはまずない。この影響は失業者の増大や消費市場の不振に直結していくからだ。

〜米ドルの実質価値はまだまだ下がる〜
●米国は、金融危機によって金融機関が抱えた不良債権を政府が公的資金で買い取るための新法制定を進めているものの、米金融界の不良債権はさらに拡大するのは必至だ。その総額は最終局面においては2兆ドルに近づく可能性すらある。
本来、米国では巨額と言われる年間の軍事支出ですら5000億ドル程度で、米国内の財政赤字の総残高は10兆ドルである。
当面、財政赤字は米国債の発行で穴埋めされるだろうが、そもそもこの米国債の大半は日本を含む海外政府や投資家が買っており、彼らが米国債を買わなくなると米ドルの長期金利が高騰。米国債の債務不履行を引き金にドルの価値がさらに急落するシナリオも、いよいよリアリティを帯び始めた。

〜為替の影響を受ける日本の自動車系企業〜
●今でさえ同危機は、米欧日の中央銀行が無制限のドル供給を行うことで何とか回っているに過ぎない。今後は米政府の巨額の救済策も効かず、またG7の国際協調の救済策も効かない。金融システムの深刻な危機は今も深まっているのである。かつて1929年の金融恐慌において、日本は世界大戦を行い敗戦へと向かう破綻の道を歩んだが、この経済破綻が日本の自動車メーカーの実質活動にどこまで深刻な影響を与えるかは、未だ予断を許さない状況にある。

〜米欧における国際的な覇権争いの勃発〜
●この流れを受けて世界経済に対して今後も裏から影響力を行使し続けたいと考えている英ブラウン政権は、金融危機後の国際的金融の主導体制について第2のブレトンウッズ会議を早急に開こうと呼びかけている。
同会議は、米英独仏伊日加のG7にBRICとその他の主要国(南アフリカ、サウジアラビア、メキシコなど)が参加をにらみ、かつて1944年の「ブレトンウッズ会議」によって構築されたIMFと世界銀行による国際金融機関の体制見直し進めるものである。

〜米国債売却に乗り遅れる日本政府〜
●同会議は今の金融危機の解決策の抽出機会としては必要だ。しかし結局は、前ブレトンウッズ会議と同様に米経済覇権崩壊後の世界体制を巡る国家間の覇権争いに過ぎない。
現実には、中国政府はすでに自国の銀行に対し銀行間市場での米銀行への貸し出しを禁じるなど、国際銀行間融資は綱渡り状態にあるし、そうした中国を筆頭に中東・南米との連携を取り始めているロシアの動きなど、世界各国は瓦解する米国債をいかに上手く売り抜けるかに必至だ。しかし円換算で70兆円(6000億ドル)を抱える日本は、対米従属体制のなかで巨額の損失を被るかも知れない。

〜米ドル至上主義、ドル経済圏の崩落〜
●一方で富裕層への減税政策を熱心に行ったブッシュ政権下の米国は、国内の貧富の格差がさらに拡大する愚行を繰り返し、遅かれ早かれ国際金融システム上での超大国の地位を失うだろう。世界は確実に多極化する。現時点では世界の基軸通貨は確実にドルなのだが、今後は複数通貨による組み合わせになる可能性が出てきている。具縦気にはアジアと欧州に、いくつかの新たな資本のハブエリアが登場する可能性は高い。

〜今一度考えたい、企業は誰のためにあるのか〜
●日本の自動車メーカー各社にとって、同影響を受けて下落し続けた為替の影響は深刻で、例えばトヨタ自動車ではドル換算で1円の円高は、実業における350億円もの損失に相当する。各社共「爪に火をともす」「絞った雑巾をさらに絞る」といった涙ぐましいコストダウンの継続努力など、たった1円のドル下落が吹き飛ばしてしまう。
今日レバレッジ金融が台頭するなかで「企業は株主のためにある」と説いた価値観が日本のベンチャー資本家のなかで一人歩きしたが、それは国際的には米国のみが持つグローバルスタンダードに過ぎず、EU圏各国の大半においては「企業は社会のためにある」と説かれている。
本来、企業が実業の上で努力した結果が、あくまでもコイン裏側、影の部分でしかないマネーゲームに影響されるという実実が果たして正しいことなのかを考えてみるべき時に来ている。

〜新たなマネーゲームには迎合しない志を〜
●かつて21世紀をまたがって失われた10年を経験した日本は、永らく米国型グローバルスタンダードに振り回されてきたが、本来日本には日本独自のビジネススタイルがある。
日本の時の首相は先に「排出権取引を活性化したい」と経団連に要望。したようだが、これによって日本が排出権という国際的なマネーゲームに巻き込まれないことを祈りたい。いずれにしても昨日より今日、今日より明日へ向けて、国際的なビジネスの価値観は大きく変革しているのだから。

〜拡大なき企業存続という道もある〜
●1980年代に日本のモノ造りは世界を席巻したが、それを踏まえて巨額の資本準備金を抱えるに至ったトヨタは、米国式に中国から中東、南米、アフリカと企業覇権を拡大させて仮にすべてを駆逐した後、どういうビジネスを展開するのか。我々日本人のビジネススタイルには、覇権主義とは異なる独自の企業論理もあるはずだ。
日本国内の老舗ブランドを筆頭に我々現代日本人が学ぶべきお手本は、歴史を紐解くことなく現代社会にも数多く存在する。米国の覇権主義が陰りを見せている今、アングロサクソン型のような拡大や覇権を目指さないビジネスモデルを持つ日本。そんな我が国は世界を救うに値する資質を備えていると筆者は固く信じている。

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